規制破壊―公共性の幻想を斬る 表紙

規制破壊―公共性の幻想を斬る
中条 潮 


東洋経済新報社
定価 1553円+税
ISBN 4-492-39210-6
1995 刊行
松本 功 評
1998/4/15


 中条さんは、「規制緩和」の論客として知られている学者である。様々なメディアにも良く出ている。私は、SPA!のコメントで、中小学校での生徒一人に対して100万円近い支出が行われているという言葉にびっくりして、books.or.jpで検索してこの本を知った。
 もちろん、出版業界の端っこに所属している私としては、再販制の維持に異を唱える論客として名前は知っていた。そして、どうしても関心はそこに向かってしまう。私は、ここで述べられていることに、出版業界は反論できないのではないか、と正直思った。
 中条さんは、カルテルは利益保留によって、採算のあわないものを販売するという理屈で行われるが、それは、実際には機能していないし、採算の合わないものは今でも、行われてはない、という。それよりも、採算はとれないが、社会が必要と認めるのなら直接的に経済的に支援した方がいい、という。これは、航空会社のカルテルについて主に言っていることなのだが、本の場合も当てはまる。採算のとれないもの、専門書が再販制によって守られ販売されているという実績はまったくないからだ。
 ただ、採算がとれなくても社会的に必要だと認定する場合、どのような仕組みが必要なのだろうか。もちろん、それは、市民との対話によって決められて行くわけだが、成功させるのは簡単ではないかも知れない。市場という利益と欲望に基づく市民の判断と、社会的に必要だと認定する知性的な市民の判断。これをうまく機能させることができるか、にかかっているのだろう。中条さんの考えに同意しない人も、ぜひ読んでもらいたい。



書評INDEXヘ