修羅場の人間学-会社を潰す社長・興す社長−
野口誠一  編

東洋経済

1,456円+税
ISBN 4-492-55215-4
遠藤 善道 評
1998/4/12

 「この15年間、八起会は「倒産110番」あるいは「倒産駆込寺」を通して、実に多くの悲惨、悲劇に接してきた。...会社に倒産がつきもののように、人生も失敗や挫折と背中合わせである。それゆえ、失敗や挫折は決して恥ずかしいことではない。真に恥ずかしいことは、その失敗を克服できないこと、再起できないことである。」
 序文からして、このように、なにやら身構えさせられるような文章が続きます。
 世の中不況のまっただ中で、倒産、廃業のニュースのない日ありません。わたしも、つい最近、「ちゃんと廃業できて良かった。(借金なしで廃業できて、数名の従業員の再就職も決め、社長夫婦は年金で暮らしていける。家屋敷も手放すことはなかった)」という話を聞きました。倒産する会社に勤めている人も大変だと思いますが、会社を倒産させる社長も、会社が傾きはじめてから倒産するまでの「あがき」やその後の処理や生活は大変なものだと思います。悲惨という言葉では言い表せないのではと思います。
 現在著者は、ボランティアで、このように、会社を倒産させてしまった人の、再起を目指すための支援をする会「八起会」を主催しているそうです。この「八起会」は、「倒産者の集い」、「倒産防止」、「自殺防止」、「再起のお手伝い」、「心の再起」といった活動を、ボランティアでしているそうです。
 著者自身の悲惨な経験と、「つくせ」という「天の声」があったとはいえ、すばらしい活動だと思います。
 本書には、この「八起会」に持ち込まれた、「倒産する、どうしよう」、「夜逃げした、どうしよう」という相談が、著者の見聞というかたちで、生々しく紹介してあります。また、「どうするか」という助言や、どのような立場からアドバイスするかということも書いてあります。
 なにより、著者自身の、会社を興して、放漫経営をし、潰して、再起するまでの過程も詳細に(恥を忍んで)紹介されており、この章は圧巻です。そのほかにも、普通の人が経験できないような(経験したくないような)事例が多数紹介されています。
 会社を倒産させるという、危機的状態の中で、百人百通り、その後の身の振り方や、再起のしかたもさまざま。つまらない小説や、トレンディードラマよりもずっと身に迫るものがあります。
 まさに小説より事実は奇なりといったところでしょうか。
 「失敗から学ぶ」、「他山の石を持って、我が玉を磨く」などといいます。本書もこの趣旨で書かれていますが、まだまだ未熟な私は、「失敗から学ぶ」という事はできそうにありません。
 本書の中で、「倒産はあくまでも経営上の失敗であって、人生の失敗ではなければ、ましてや刑事犯罪ではない。」ということが繰り返し書いてあります。また、著者は「夜逃げは世逃げ(夜逃げすると再起できないばかりか、状況が悪くなる)」と主張しています。本書を読み終わって、このテーゼをなんとなく理解できたような気がします。また、この主張に賛成したいと思います。
 現在、会社倒産の危機で苦しんでいる人や、その他の危機的状況で苦しんでいる人や、その周囲の人のみならず、順風満帆、平穏な生活を送っている人、すべての人にお勧めしたい本です。
 欲を言えば、もう少しケーススタディー的に、また現実に危機に瀕している人向けに書いてあれば良かったと思います。


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