あ、発明しちゃった!
IRA FLATOW(西尾操子訳) 著
アスキー出版局
1,980円+税
遠藤 善道 評
1998/4/9
一生懸命研究し努力した結果が、たいていは報われないのだけれども、まれに発明になって報われることもあるし、ほんの偶然が発明になることもあります。人間万事塞翁が馬、どこに何が転がっているか、どんな契機があるかわかりません。偶然出会ったり、偶然見つけたことが発明に結びつけば、それは非常に幸運なことだと思います。
本書には、実際にそんな幸運に恵まれた、希な人の話や、発明に付き物の裏話が24話紹介してあります。
タイプライターが発明当初は、誰にも見向きされなかったり、化学実験室の薬品を片っ端からなめて、サッカリン(甘味料の一種)を発見したり、フランクリン以前に実は、たこを飛ばして雷が電気であることを確かめた人がいた、世界最初のコンピュータはENIACだといわれていたが、実はイギリスで暗号解読用にそれ以前に開発されていたなど、興味のある話が収録されています。
この中の話のいくつかを覚えておいて、折に触れてうんちくを披露すれば、ちょっとは物知り顔ができそうです。また、こういった話はけっこう楽しいものです。
ただ、発明の裏話には作り話が多いものです。本書にあるすべての話が本当かどうかは定かではありません。
例えば、電子レンジの発明につながる、マイクロ波の加熱特性の発見は、ポケットに入れておいたキャンディー(通常はチョコレートだといわれています。本書ではキャンディーとチョコレートの両方が書いてあり混乱しています)が溶けているのを不思議に思って...とありますが、いかにも後から作ったような話です。
また、ナイロンの紡糸技術を、研究者が遊んでいるときに偶然見つけて、上司の帰った後で、廊下で引っ張りその技術を確認したなどという話は、かなり作り話臭い話です。
私たちは、「ああそうか!」で、その話が事実かどうか確認する手段や手法を持ちません。本書でその話が事実かどうか確認しあれば良いのですが、話の紹介だけで、事実の確認の跡があまり見受けられません。読後に何か引っかかるものが残ります。まあ、発明の裏話が、それほど重要なこととは思われないので、良いと言えば良いのですが。...
本書は24もの話があるために、それぞれの発明や発見についての詳しい説明や背景、技術的な事柄や、発明されてから何年も世の中に出れなかった理由、研究者の努力等についての記述はあまりありません。専門書ではなく一般向けの本なのでしかたありませんが、かなり物足りないものがあります。また、取り上げられている発明も何でもありの状態で特にテーマなどは無いようです。
雑学なのでしかたありませんが、こんなところが、読んでもそれほど感動したり、得したりする気分にはならない理由です。
もう少しテーマを絞って、発明や人間の動きを詳細に解説してくれていたら、と思います。
また、訳についてですが、完全に日本語にはなっていません。
文法的には全く問題ないので意味は明瞭なのですが、日本語の言い回しにないような訳、つまり直訳が随所にみられ、所々変な感じを受ける場所があります。
また、日本では使わないようなものや名前が違うものは、日本で使われているものに訳して欲しいと思います。
例えばフィートはセンチメートルに、華氏は摂氏に、ベルクロはマジックテープに、ツァイ・ルンは祭倫(紙の発明者。この漢字は間違い。祭には草冠が必要)にしたほうが、わかりやすいはずです。ただ、外国語を日本語にするだけが翻訳ではないはずです。
そんな、こんな理由で、私は、本書をあまりおすすめしません。
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