年金制度の危機
村上 清
東洋経済新報社
定価 1600円+税
ISBN 4-492-70034-x
1997/3 刊行
南都雄三 評
1998/2/27
年金の問題を鋭くえぐった本である。本書を読むと日本での年金のあり
方の問題が、痛切に感じられる。それは、現在払っているお金がちゃんと
払われないのではないか、ということではなく(それについては何とかな
るだろうと言うのが、著者の意見である)、厚生省の役人の政策的な失敗
によって、せっかく払い込まれたお金が間違った運営をされているという
ことだ。
企業年金の問題について、それは5.5パーセントの運用規定があること
が、問題の全てではなく(これは先日の報道によるとこの規定ははずされ
たようだ)、国民全体で運用すべきであった払い込み金を企業に任せるこ
とで、国民全体のものではなくしてしまったことにある、とのことだ。利
益が出たとき、5.5パーセントの運用が容易であったときには、本来は国
民全体の年金の資金となるべきであったのに、そのグループ内で配分さ
れ、今は5.5パーセントを切っているため、企業がその埋め合わせのため
に苦労している。ここの点については、日経新聞の『年金の誤算』がなぜ
か全く触れていない。運用ができないことが問題である以前の問題がある
のだ。
年金の問題は、国民の問題である。このようにわかりやすい形で問題が
提出されていることを喜びたい。ただ、年金がサラリーマンが世帯のほと
んどを占めるという前提で組み立てられていることが、本書で分かるが、
その基盤が崩れつつある現在、全体的な見直しも必要なのかも知れない。
サラリーマンの妻が、自分では支払わずに、年金を受け取れる問題も、著
者の言うとおり、健康保険が、世帯主の加盟によって家族全員が対象とな
るということとの比較で、理解はできる。だが、妻が働き、夫が家庭にい
た場合、どうなるのだろうか? SOHOの場合は?(ボーナスは、構成年
金には、あまり関係ないが、SOHOの場合、夫婦は役員である場合が、ほ
とんどだから、全収入が、年金へ払い込む対象になってしまう。わかりや
すく言うと、年収1000万でこのうちボーナスが500万のサラリーマンと
年収500万円の事業主では、年金のために払い込む金額が同じになってし
まうのだ)年金のシステムがサラリーマンでない場合も、理屈の通るよう
にして欲しいものである。年金は複雑でわかりにくい。著者には、続編を
執筆されることを希望したい。
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